支配人インタビュー Vol.1】ホテル東山閣総支配人足立様
今回はホテル東山閣総支配人の足立様にお時間頂きました。どうぞ宜しくお願い致します。
<Profile>
東山閣 総支配人 / 足立 尚哉 様
1992年 経理として入社
1994年 営業部(予約係)へ異動
1996年 営業部リーダーへ昇進
2004年 宿泊部部長を経て、営業部長へ
2009年 本部長に就任
2012年~ 総支配人に就任
「宿泊業界への就職経緯について」
-さっそくなのですが、なぜ宿泊業界の東山閣に入社するに至ったのですか?
当時就職セミナーに参加していたころ、普通の会社が資本金数千万円のところ、東山閣は資本金が3億4000円もあってこれはすごいと思い話を聞いてみようと思いました。
僕は経理の学校を出たので、元々はそっち方面を考えていました。それで経理の募集があった会社がたまたま東山閣だったという流れです。
「経理入社から総支配人までの経緯とは」
-そういった経緯で就職されたんですね。それから入社後はどのような仕事をされていましたか?
約2年間は先ほどお話した通り経理をしていました。学生時代は居酒屋でバイトをしていて、もう接客業をするのは面倒くさいなと思っていたところ、経理であれば表立って動くこともないかなと思っていました。ところが実際はフロントにキャッシャーがあったこともあって、フロントに出る機会も多かったですね。結局は人と携われる仕事でした。
「結構人と関わっているな」と思っていたところ、当時の営業次長から営業(予約係)に行ってみないかと言われ、それからはずっと営業(予約係)でした。業務としては、予約のコントロールが主なところになります。総支配人になるまでの流れは営業に異動になって2年くらいしてリーダーという役職が出来て、その役職につきました。そこから3年くらいで部長になりまして、今から6年前くらいに総支配人になりました。
入社して26年になりましたが、結果的にサービス業は自分に合っていたなと今では思っています。笑
-経理で入社されたようですが、総支配人になるとお客様などの対応のみならず、業務全般をしなければいけないですよね。そこに関しては、ここまで出来た要因などはございますか?
経理として働いているときも営業的な会話をしていたので、本当は人と関わる事は好きでした。だからここまでやってこれたんだと思います。
-総支配人は業務全般を対応するかと思いますが、1日のタイムスケジュールはどういったものでしょうか?
本当はどんと座って数字の管理とか、きちんと全体を見るのが本来の総支配人の姿なのでしょうが、僕は個人を見ながら、たまに全体を見ているような形で仕事をしています。現場の仕事を手伝うこともありますから、総支配人らしいことは出来ていないと思います。(笑)
「宿泊業界で働くと多くの状況や人に対応できるようになる」
-足立様は約26年宿泊業界で携わってきて、どういった人がホテル業に向いていると思いますか?
そうですね、フロントスタッフとかはやはり人と話す事が好きな人が向いていると思います。ホテルでは、色んな人と話しますから、演じられる人がいいですね。色んな人と、それこそ自分が苦手な人とも関わりますし、演じる事が苦手な人は不向きじゃないでしょうか。
-最近の若者は年上の人と話す事が苦手な人も多いと聞きますが、そういった人たちにはどのような教育をされていくのですか?
僕の場合、事務所にいても冗談ばかり言っていますので、アットホームな雰囲気で何でも言い合える様な環境かと思います。僕はゴルフはしないのですが、ゴルフの打ちっぱなしに行ってから本番に行っても、実際はコースがデコボコしている事があるみたいに、研修と本番は全然違う環境ですので、目についたらその場で伝えるようにしています。例えば、フロントの対応で話す関西弁のニュアンスでも、語尾の上げ下げだけでも相手の受け取り方も変わってきますのでそういう細かいところも伝えるようにしています。
-やはり、サービス業界は特に言葉や動作一つ取っても、気配りが必要ですよね。続いての質問ですが、ホテル東山閣様は、どのような採用をされていますか?
これは結構難しいところで、面接では人と関わる事が好きという人もいるけど、結局は入ってみないと分からないんですよね。割合的には明るい人を多く採用する傾向にあります。笑顔が出来ない人は難しいですね。逆を言えば、学校の勉強が出来る、出来ないという所は重視していなくて、きちんと笑顔が出来る人ならば大体大丈夫です。
-採用は企業にとって、最重要事項といっても過言ではないですよね。東山閣様は様々な取り組みをされていると思いますが、入社後の研修等はされていますか?
どの部署も入社後4カ月間研修があります。研修は基本的に上司が担当しています。 部署は大きく、フロント、予約、経理、ダイニング(食堂)に分かれています。フロントにはマニュアルがありますが、予約は一から教えています。経理は自社のやり方を教えていっています。そして、 各部署の研修を通してから配属先が確定することになっています。
「時代の変化とともに宿泊客の変化もしている」
-京都は日本でも有数の観光地ですが、東山閣様に宿泊するお客様はどういった方が多いでしょうか?
基本的に個人で利用される方と団体で利用される方と半々になります。昔は団体の方が多かったのですが、最近は個人の方も増えてきました。ツアーで2名ずつが何組とか、そういったものが増えました。昔団体客が多かったというのは、慰安旅行や、社員旅行で旅行に来る方が多かったからなんですよ。飲料メーカーさんとよく話をするのですが、昔のような宴会が減ったこともあって、飲料の仕入れの数はだいぶ減ったようです。最近は旅行の在り方も変わってきて、会社の旅行も減ってきている反面、個人で旅行する人が増えてきました。時代の流れで、今は携帯一本でホテルに予約できるようになったので、自然と個人客が増えてきました。
-また、近年の宿泊業界ではインバウンド事業も強化され、多くの外国人が日本に旅行に来ますが、やはり海外の旅行客が増えてきた実感はありますか?
そうですね。ここ10年で確実に増えてきています。ただ逆に国内旅行客が減ってきています。
国内観光客が減っているのは問題ですね。しかし、2020年~2025年で国際的な大規模のイベントが多くありますが、その影響等はありますか?
ホテルが今でも十分多いので、オリンピックが終わった後で持っている部屋数は埋まっていくのかという疑問はあります。
また、ホテル業界で働く人も減っていっているのが、少し不安要素ではあります。
「総支配人が考える”おもてなし”とは」
-日本人旅行客や訪日旅行客は宿泊業界に対して、「おもてなし」を求めているかと思います。足立様が考える”おもてなし”において、大事なことはなんでしょうか?
お客様に気持ちが通じるかどうかが大事ですね。「おもてなし」とは「表に無し」だと思ってまして、形には表せないものだと思います。しかし、挨拶一つでお客様に気持ちが通じることもある。しかしながら、それを教える事は出来ません。お客様の笑顔が見たいという気持ちがあれば、「おもてなし」は伝える事が出来ます。僕も「人を楽しませたい、笑顔を常に作っていて欲しい」、そういう思いを従業員に持って欲しいから冗談も言うようにしています。 笑顔の癖は仕事に出るようになっていくので、それがまた「おもてなし」につながっていくんだと思います。
-“おもてなし”を伝えることの根本は「周りの人を笑顔する」とこから繋がっているんですね。それでは、”おもてなし”を伝える仕事を通して「やりがい」を感じるときはいつでしょうか?
最近、特に異文化コミュニケーションをとる機会が増えてきました。普通は自分から動かなければ会えない人達に待っているだけで会える、いろんな業種、人種の人達とコミュニケーションをとれる事が自分にとってプラスになると感じる仕事だと思います。 長く務めれば務めるほど出逢った人たちとの輪が出来ています。その輪が出来る楽しみが今もあります。社会人になって今まで通用していたことが通用しなくなることは多いと思います。この仕事は特に、理不尽な事を言われたり、我慢する場面もあります。それを耐えて乗り越えて、半年とか、一年たつと、自然と我慢できるようになっていたりします。そして、しっかりと仕事として考えていられるようになっていたりと、ちょっとしたことで成長を感じる事がある機会があります。それもまたやりがいだと思います。
「今後の宿泊業界に対して思うこと」
-多くの人々に感謝をもらえる「宿泊業界」ですが、今の宿泊業界に対して思うことはありますか?
今の宿泊業界は、人材不足を解消するために「おもてなし」を一旦簡素化して、人手のかからないような仕組みになっていっています。それはどうなのかな、と思うことがあります。 人を通さずに行う仕事では「おもてなし」が通じなくなっています。 これだけホテルが乱立していると、どの施設も突き当たる問題になっています。 お客様が「おもてなし」を求めているならば、それに特化した施設にするべきだし、 ビジネスマンが多いような施設だと、機能面に特化した施設にするべきだと思います。 うちは庶民的な雰囲気があるので、気軽にチェックインしてもらって、気軽にチェックアウトできるような「気軽さ」にマッチして頂けると、リピートしてくださると思っています。 そういった色合いを施設ごとに大事にするべきです。 人手不足は業界全体で大きい問題だからこそ、もっと楽しい仕事だよと見せていくことが大事になってくるんでしょうね。皆さんが余暇を楽しんでいるときに働く仕事なので、それを上回る魅力を伝えていくことが難しいです。 志をしっかり持っている人ならば、きっと楽しいと思います。 ただ、そういう人ならほかの企業でも頑張れるんでしょうね。
-足立様、本日はお時間頂いてありがとうございました。採用や従業員、宿泊業界全体への思いを伝えていただいたことで、また新たにこの業界へ就職したい人も増えると思います。今後も何か発信していただけると幸いです。
東山閣様も当サイトに掲載されていますので、是非ご一読ください。
ホテル東山閣の「会社をみる」